自分が子供の頃(だいたい昭和40年代)、近所の歯科医院は、中に入ると消毒液の臭いと歯を削った時の臭いが混ざり合ってツーンと臭覚を刺激し、とたんに私は緊張したものでした。
たいてい自分にはその時痛みを感じる歯があり、この先の展開として、いつものクールな先生が先のとがった器具で歯の痛いところをつっつくであろうと、確実に予想でき、事実、医院の外に出るまでは何回も苦痛を味わいました。
その体験の中でも特筆すべきことは、先生が虫歯の深さを知ろうと先のとがった器具を歯の中につっこんだところ、それが直接歯の神経に触れ足の先まで電流が流れたような激痛におそわれたことです。
この恐怖の体験が、歯科医になったときに患者さんへの治療スタンスを決めた原体験です。
歯を削る時は痛みが出ないようにできるだけ麻酔してから行おう、麻酔自体も痛くないようにたっぷり時間をかけて何回にも分け、注射針も最も細いのを使い、表面麻酔にも時間をかけてという具合に…。
私にとって、「患者様ができるだけ痛みを感じないように治療をする」ということが最も重要なことなのです。
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